「困惑した君の顔もなかなか美しいね。
僕は、二十三で、君はもうすぐ十六。
結婚できる年齢だけど、進学したいのだったら結納を交わして、
君が女学校を出てから結婚ということにしてもいいよ。
こんなに美味しそうな君を目の当たりにすると、
待てなくてすぐに結婚ってことになるだろうけれど。
君は、会う度に美しい女に変化していくからね。
他の男の視線に触れさせるのがもったいないから、今すぐにでも榛の家に
連れて帰りたいくらいだ。
光祐坊っちゃんのことが好きなことくらい一目瞭然だが、いくら好き合って
いても、孤児(みなしご)の君が光祐坊ちゃんと結婚できるわけがないだろう」
祐里に恋焦がれる文彌は、光祐さまと祐里のお互いに惹かれ合う気持ちを瞬時に察知していた。
見初めて以来、祐里の視線の先には、何時も光祐さまが居た。
文彌は、燃え盛る恋の眼差しで祐里を見下ろし、激しい恋情をぶつけるように、祐里の華奢な肩を抱き寄せて唇を奪おうと迫る。
祐里は、文彌の腕の中で、力いっぱい抗った。
「お許しくださいませ。お会いしたばかりでございます。
お見合いのことすら旦那さまから伺ってはございませんし、
それに私は、まだ結婚など考えられません」
祐里は、光祐さまを想い、頑固に文彌の抱擁を拒絶した。
「まぁ、楽しみは後にとっておいてもいいか。君はもう僕のものなのだから。
桜河の旦那さんは、乗り気になっているからね。
それはそうだろう、後継ぎの光祐坊ちゃんの側にいつまでも綺麗な君を
置いていては、間違いが起こってからでは遅すぎるもの。
それとも、もう、光祐坊ちゃんには抱かれたの。
それで日陰の女にでもなるつもり」
文彌は、孤児(みなしご)という立場からして自分の意のままにおとなしく従う
と思っていた祐里の頑なな拒絶にあい、ますます祐里への恋情を
滾(たぎ)らせていた。
「光祐さまに失礼でございます。そのようなことはございません。
光祐さまは、精錬(せいれん)な兄上さまでございます。
それに、私は、ものではございません」
祐里は、初めて会った文彌から容赦ない侮蔑を受けながらも
(この方に怯むわけには参りません)
と真っ直ぐに見詰めて言い返す。
「ふふっ、光祐坊ちゃんは、兄上さまか・・・・・・
自分の身分を弁えているのならば話は早い。
僕は、身分違いの君を正妻にしてやると言っているのだよ。
感謝してもらいたいね」
文彌は、必死になって受け答えをする祐里をますます愛おしく感じていた。
僕は、二十三で、君はもうすぐ十六。
結婚できる年齢だけど、進学したいのだったら結納を交わして、
君が女学校を出てから結婚ということにしてもいいよ。
こんなに美味しそうな君を目の当たりにすると、
待てなくてすぐに結婚ってことになるだろうけれど。
君は、会う度に美しい女に変化していくからね。
他の男の視線に触れさせるのがもったいないから、今すぐにでも榛の家に
連れて帰りたいくらいだ。
光祐坊っちゃんのことが好きなことくらい一目瞭然だが、いくら好き合って
いても、孤児(みなしご)の君が光祐坊ちゃんと結婚できるわけがないだろう」
祐里に恋焦がれる文彌は、光祐さまと祐里のお互いに惹かれ合う気持ちを瞬時に察知していた。
見初めて以来、祐里の視線の先には、何時も光祐さまが居た。
文彌は、燃え盛る恋の眼差しで祐里を見下ろし、激しい恋情をぶつけるように、祐里の華奢な肩を抱き寄せて唇を奪おうと迫る。
祐里は、文彌の腕の中で、力いっぱい抗った。
「お許しくださいませ。お会いしたばかりでございます。
お見合いのことすら旦那さまから伺ってはございませんし、
それに私は、まだ結婚など考えられません」
祐里は、光祐さまを想い、頑固に文彌の抱擁を拒絶した。
「まぁ、楽しみは後にとっておいてもいいか。君はもう僕のものなのだから。
桜河の旦那さんは、乗り気になっているからね。
それはそうだろう、後継ぎの光祐坊ちゃんの側にいつまでも綺麗な君を
置いていては、間違いが起こってからでは遅すぎるもの。
それとも、もう、光祐坊ちゃんには抱かれたの。
それで日陰の女にでもなるつもり」
文彌は、孤児(みなしご)という立場からして自分の意のままにおとなしく従う
と思っていた祐里の頑なな拒絶にあい、ますます祐里への恋情を
滾(たぎ)らせていた。
「光祐さまに失礼でございます。そのようなことはございません。
光祐さまは、精錬(せいれん)な兄上さまでございます。
それに、私は、ものではございません」
祐里は、初めて会った文彌から容赦ない侮蔑を受けながらも
(この方に怯むわけには参りません)
と真っ直ぐに見詰めて言い返す。
「ふふっ、光祐坊ちゃんは、兄上さまか・・・・・・
自分の身分を弁えているのならば話は早い。
僕は、身分違いの君を正妻にしてやると言っているのだよ。
感謝してもらいたいね」
文彌は、必死になって受け答えをする祐里をますます愛おしく感じていた。

