―フワ…
あの匂いがまた私を包み込んだ。
「おはよう。ユキ。」
すれ違いにそう声を掛けて私をすり抜けて行く…
「ま…待って。」
振り絞って大きな声を出すと、彼は振り向いてくれた
「何?ナンパの返事?」
笑ってる…いつもと同じ目で…笑ってる。
「これ…」
そう言いながら、右手にもった紙袋を差し出した。
「…何?」
「制服…。あの日はありがとう。」
「あ~…そうだ!なんか寒いと思ってたんだ!これ着るの忘れてた~。」
またハハって笑って、私から紙袋を受け取る。
「それじゃ…これで。」
これで…もう終わったから。
もうこの人から離れよう。

