運命の、その場所で


ふたつ並んだ雪だるまは、まだ原型を留めていてくれた。


私はその前に行って、思わず座り込んでしまった。



「ゥ・・・ナチ。・・・ナチ。」


自分の中に溢れたのは、ナチだけだった。

ママなんか、あんなおっさんなんか思い出したくない。


すべてを・・・ナチで、埋め尽くして。


嫌なことを忘れたい・・・


なのに・・・

なのに


『邪魔者は、アンタだけよ?』


憎らしいアイツの顔が・・・
私に襲い掛かるようにナチをかき消す。



「やめて・・・」


ベンチにもたれて、目を閉じた。


闇と戦うように、どこからともなく聞こえるアイツの声に何度も何度も叫び続けた