夏の夜に暑苦しい部屋の中になんか居られない。
 そう思っているのに、下から聞こえてくる楽しいそうな声の輪に入っていくことが出来ず、リナは部屋の窓を開けた。
 暑苦しい空気が外に逃げ出し、わずかに涼しい夜風が部屋の中に入り込む。
 窓の外は草むらになっているようだ。
 まだ夏真っ盛りだと思っていたのに、夜に流れる自然のメロディは蛙の合唱から鈴虫の輪唱に変わったらしい。

 「下に降りて来ないのか?」
 軽く部屋のドアがノックされ、声が聞こえる。
 低い、それでいて困惑したような声の持ち主は仲間のもの。そんな誘いにも、あたしは拒否の意を示した。
 「……気分が悪いの。悪いけど、明日の朝まで寝てても良い?」
 「寝ていれば治るのか?」
 裏に「薬は要らないんだな?」という意味を感じて、肯定の返事をする。
 「薬師は呼ばなくてもいいんだな?」
 わざわざ仲間の名前を呼ばすに「薬師」と言ってることから、何のせいで気分が悪いのかはバレバレのようだ。
 「ガリオル、しつこい。寝てれば治るって言ってるじゃない。薬なんか飲んだら、副作用で逆に気分が悪くなるわよ」