「あ…ウォレン様…」

 ウェイ・オンがその姿を見て呟く。振り返ると、そこにはウォレンの姿があった。視線がぶつかり合う。

「ウェイ・オン、ジョン・マーク。二人ともみんなが探していたぞ」

「…はい。では、行ってきます。あの、レイズ船長からフィス様を一人にするなと」

「ああ、わかった。俺がここにいる」

「それでは」

 二人はフィスにまだ聞きたいことがあるような素振りを見せながらその場を去った。

「暗い顔をしてどうした?」

「え…?」

「そういえば、婚約者がどうとか聞こえたが」

「あなたには関係のないことです」

「そうかな」

 間髪いれずにそう言うウォレンを、フィスは訝しげに見上げた。

「どういうこと?」

「いや、別に」

 それだけを言うと、彼は隣にどかっと腰掛けた。先ほどまでレイズが使っていたグラスを一気に開ける。そしてゆっくりと視線をフィスに向けた。

「フィス、君はいったい誰だ?」

 何もかもを見透かしたようなその口ぶりに、フィスは答えることができず言葉を詰まらせた。

「誰なんだ―――?」