「レイズ、浮かない顔してどうしたんだい?」

 一人の男が現れた。体格のいい男だ。

「いや、何も。それよりうちの副船長殿を見かけなかったか?」

「いいや。ウォレン様を見かけたのは船が着いたときだけで、それからは見てねぇな」

「そうか」

「なんだい、仲間割れかい?」

「まさか」

 あり得ないだろう?という笑みを浮かべてレイズは言う。

「あいつは停泊するとすぐにいなくなる」

 呟いた言葉にフィスは問いかけた。

「どこに行っているの?」

「さあ。ま、そのうち戻ってくるだろう」

 体格のいい男が違う場所で飲もうと誘うと、後で行くとだけ告げてレイズはフィスの隣に留まった。

 それから時間は流れ、パーティは更なる盛り上がりを見せていた。酔いつぶれている者、音楽にあわせて踊っている者。フィスの瞳にはそれらが新鮮に映っていた。

「楽しんでいますか?」

 聞き覚えのある声でフィスは現実に戻った。目の前にいたのはユナだった。先ほどから数えてこの席にはいったい何人の人がやってくるのだろう。

「どんちゃん騒ぎでしょう? うちの父は本当にこの日を楽しみにしていて、困っちゃうくらい」

 笑顔を見せながら、フィスの隣の席にユナが腰を下ろした。レイズが苦笑いを見せながら空いているグラスに酒を注ぐ。そして暗黙の了解のようにそれをユナに手渡す。

「ありがとう」

 心の中でフィスはなぜだか『またか』と呟いていた。二人の間には何か他の人間には入り込めないような雰囲気が漂っている。そこにザイラスが現れた。