レイズがパーティ会場に現れると、にわかにその場は活気付いた。広場の中央に簡易に作られた小さなステージの周りにはたくさんの人々が群がっている。

「レイズ船長!!」

 一際大きな声を出して駆け寄ってきた男を、レイズは笑顔で受け入れた。

「ザイラス殿、お元気そうで何より」

「レイズ船長こそ、お変わりなく。私どもは今日のこの日を首を長くして待っておりました」

「今日もこのようにパーティの準備をしてもらって感謝している。ディックバードの船員たちもポート・ウェインに停泊することを楽しみにしている」

「さあ、こちらへどうぞ」

 ザイラスと呼ばれた男は、用意してある席にレイズを案内する。

「レイズ船長、こちらの美しい女性は?」

 ふとフィスの存在に気付き、ザイラスは問いかけた。

「ああ、ディックバード号の客人だ。フィスという」

「そうですか。さぁ、フィス様もこちらへどうぞ」

「ありがとう」

 勧められるまま席に着くと、フィスは辺りを見回した。広場のいたるところには飲食店があり、皆同様に店の外に売り場スペースを拡張させている。

「どうぞ」

 誰かのそんな声で目の前のテーブルに飲み物が置かれた。ザイラスは少し離れたところでグラスを持った。

「レイズ船長の準備ができたのでパーティを始めたいと思う。みんなグラスは用意したか?」

 ことの大きさにフィスは目を白黒させながらレイズを見た。

「見ていろ。この夜は大いに楽しめばいい」

 何のことを言っているのかフィスにはさっぱりわからないが、それでもパーティは始まってしまうらしい。

「それじゃ、ディックバード号が無事到着したことに、乾杯!!」

 ザイラスが音頭をとると、皆大きな声でそれに続いた。その瞬間、先ほどまでは暗闇の中で見えなかった場所にほんのりとした明かりが灯り、そこから軽快な音楽が流れ出した。視線がそちらに動くのと同じタイミングで夜空には花火が打ち上げられる。

 たくさんの歓迎の拍手と、軽快な音楽と、楽しそうな雰囲気と。そのすべてにフィスは飲み込まれていた。