「お前、楽しんでるな?」

「だってこんな状況、面白くて仕方ないじゃない。あーゾクゾクする!」

 一人気持ちの高ぶったセイラと、それとは対照的に暗い表情を見せるウォレン。

「あ、それから一つご報告」

「何だ?」

「きっとオルドアよりもこっちの方が動くのは早いわね。近いうちアレンがディックバードを沈めるって言ってたわ。あなたもしっかり準備をお願いね」

「近いうちとは?」

「さぁ。いくら私でもそこまではわからないわ。だっていつもアレンの気分次第なんですもの。お膝元のスパイとしての立場も結構大変なのよ。突然動けなんて言われるんだから。あなたはいいわね、いつも呑気で」

「余計なお世話だ」

「ま、とにかくしっかり準備しなさいな」

「ああ、わかった」

「じゃあね」

 細い腕をしなやかに動かし、手のひらをひらひらと振り終わると同時にセイラはその姿をウォレンの視界から消した。

 再び部屋に一人になったウォレンはふぅっと息を吐き出すと、気持ちを切り替えたように立ち上がりパーティ会場へ向かった。