目を覚ますと窓からはきらめく太陽の光が差し込んでいた。

 みんなは…?!

 立ち上がりデッキへと向かう。床に座り込んだまま朝を迎えたおかげで身体中が痛んだが、それでもすぐに皆の無事を確認したかったのだ。

 足早に廊下を通り抜けると、フィスはデッキに走り出た。そこには昨日の夜とはうって変わって穏やかな海が広がり、皆思い思いの場所で眠り込んでいた。ウェイ・オン、ジョン・マーク、昨日レイズに助けられた青年、その他大勢の船員たちが穏やかな寝息を立てている。ゆっくりとデッキを見回し、フィスは踵を返した。

 デッキに姿がないということは、目指す場所はひとつだけだ。

 ホールに戻ると一息つき、ブリッジに続く階段を見つめる。

 ―――この先に、いる。

 フィスは眩しいくらいの光に向かいその階段を駆け上がっていった。



「ああ…だいぶ外れてはいるな」

 海図を広げながらレイズが呟く。

「昨日の嵐は桁違いだったから」

 ウォレンの答えに無言のまま頷くと、レイズはふいに視線を海図から離した。

「それにしても。ティムズ、一人で大変だっただろう」

「何のこれくらい。船長やウォレン様に比べたら、私なんて何もしていないのと同然だ」

「いや、ディックバードが今無事でいられるのはお前のおかげだ。あの嵐の中、この船を支えてくれて感謝している」

 レイズは満面の笑みで右手を差し出す。ティムズの表情は見る見る崩れていき、少し照れたような笑みで握手を交わす。続けてウォレンとも握手を交わすと、彼は少し驚いたような声をあげた。

「お嬢さん?」

 ブリッジの入り口には階段を駆け上がったフィスの姿があった。

「嵐は過ぎたよ。みんな無事だ。あんたの祈りが届いたんじゃないかい?」

 ティムズは微笑みながら、空に向かって人差し指を上に向けた。

「いいえ…」

 首を横に振ったフィスをティムズは不思議そうに見つめた。

「いいえ。あなたが…。ごめんなさい。さっきまであなたの名前も知らなかったのだけど。あなたが…ティムズがみんなを守ってくれたのよ」