恋する猫は、月の下~花の名のキミ~

足取りを重くしたあたしと彼の間に


数メートルの距離が出来ていた。


その距離に焦り、あたしが慌てて彼に追いつこうとすると


彼の方から、あたしのそばへ近づいてきてくれた。


「どうかした?」

彼の優しい響きの声に胸がじんわり熱くなり

急に切なさが込み上げてきた。

「あたし、何かを忘れてるの。とても大切なものなのに、どうしても思い出したいのに、何を忘れているのかわからないの…」


わからないことを思い出すのって、無理じゃない?


いつか誰かに、そんな言葉を言った気がする…


わからない…


思い出せない…