「なんだよ親父さん、会計ならもう済ませたろ?」

ヒューズは言いながら肩を竦める。

「バカヤロウ、大事な忘れモンだ」

言葉と共にカウンター下から熊親父が取り出したのは、先程とは見違えるように研き上げられた《ブレイズブレイド》、ニトロの大剣だった。

おらよ、と些か乱暴に大剣を手渡される。

「あ、ありがとう
……うわ、スゲェ……」

受け取った自分の相棒の面構えの、なんと凛々しいことか。

傷だらけささくれ立っていた刀身は、ほんの僅かな乱れもなく滑らかになっており。

今までただの鉄塊に過ぎなかった“ソレ”は、鋭利な切れ味を備え、その自重を以て物を叩き斬る、立派な“剣”へと変貌を遂げていた。

「こいつなら……例えどんな奴が相手でも負けやしねぇ!」

「ヘッ、ま、当然だな
好きなだけ暴れて来な」

「頑張ってね、お兄さん」

猛るニトロに激励の言葉を贈る二人。

「で、ヒューズ
一体どいつとやり合うんだ!?」

興奮を隠せないまま、ニトロはヒューズに詰め寄る。

「お望みの通り、飛竜討伐クエストだ」

「おおっ!」

喜ぶニトロにニッと白歯を覗かせ、ヒューズは少年のデビュー戦の相手の名を告げる。

「新米ハンターの登竜門、“大怪鳥”『イャンクック』!
……ま、厳密にゃあ鳥竜種だけどな」