◇

カランカラン

「いらっしゃいませ〜」

店内に入ると同時に、明るく元気な声が二人を迎えてくれた。

「よぉチキちゃん
相変ーらず元気そうだな」

「あ、ヒューズお兄さん
久しぶり〜」

チキと呼ばれた少女は、パッと見ニトロよりも更に若い。

彼女は、ここ“漢の武器屋”の看板娘だ。

かなり小柄な体躯は《ヘルパーシリーズ》に包まれていて、店の看板娘に相応しい服装である。

雑多な店内には数多くの武器・防具が置かれている。

大剣、片手剣、ハンマー、ランス、ボウガン、どれも手入れが行き届いている。

チキは飼い主に駆け寄る小犬のようにヒューズの元に小走りし、頭をよしよしと撫でられて、気持ち良さそうに目を細めた。

「チキちゃん、親父さんはいるかい?」

「うん、いるよ〜
おと〜さ〜ん!!」

店の奥を向き叫ぶ少女。

「なんだコラァ!
今、暇潰しすんのに忙しいんだよ!」

少女が叫んでものの数秒と経たずに、奥から男が一人現れる。

この男を一言で表すなら、“熊”この一言に尽きる。

ボサボサの大量の体毛と、ガッシリとした体つきは、正に熊そのものだ。

「相変わらずわけわかんねぇこと言ってんなぁ、親父さん」

「あ゛ぁ゛!?
誰がわけわかんねぇだコラァッ!!」

喋る度に口から派手に唾を飛ばしながら、熊がヒューズの胸倉を掴み持ち上げる。

「ちょっとちょっと、親父さん、俺俺」

俺俺、と、自分を指差すヒューズ。

「………ん?ん〜?
なんだ、ヒューズじゃねぇか」

わかった途端に手を放す熊親父、急に宙に浮いた自分の身体を、ヒューズはなんとか着地させた。

「で、なんの用だ?」

ドッカと店内の椅子に腰掛け、熊親父は憮然とした態度でヒューズにそう問う。

「ああ、ちょっと防具が欲しくてね」

「防具だぁ?」