IT関連会社の美人社長、峰山レイコの突風のような来院の後、
砂場と冴子は、その対応策を相談した。

砂場の診るところ、レイコ自身、自分の症状や原因については、
十分、自覚しているものの、その一方で現状の職場環境やライフスタイル
を改善する意思がないことも伺えるのがネックだった。

「あの人、自分が忙しくしていないと、逆に落ち着かないんじゃないかしら?」

自分が淹れたコーヒーカップを両手に包んで、冴子が言った。

「それが、まず、ワーカホリックの典型的な症状だよ。
 まさに“仕事中毒”とは、よく言ったもので、実際に中毒症状とかなりの
 部分で共通するんだ。」

「そうなの?」

「いわゆる、過労死などの問題になるような、会社や職場からの強制による
 過剰労働というより、マラソンなどで長時間走り続けると、気分が高揚してくるいわゆる『ランナーズハイ』に近い状況と捉えたほうがいいだろう。」