ある朝、叫び声で目が覚めた。

浴室で、qが姿見を見てしまったのだ。

俺は姿見に布をかぶせておいたのだが、
取って見てしまったのだ。

今のqの体にはあちこちに変色したできものがあったし、
皮膚が硬く黒くなっている部分もあった。

何より顔だ。

皮膚は水分を失い干からび、そして大きなできものが化膿し、
崩れかけていた。

qは傍から見ていてあきれるくらいに自分の顔や体が大好きだった。
よくこの姿見に自分の姿を映して見とれていた。

不憫だ。

俺が浴室に行くと、qは心底恐怖していた。
確実に、死神の姿を見てしまったのだ。

「q、こっち来いよ」

qを部屋に呼んだ。

俺は小屋から持ってきた化粧道具を引っ張り出してきた。

qの顔や体にどうらんを塗ってやった。

「付け睫もつけてみるか?」

「つけまつげえ?」

糊でqのまぶたに貼り付けた。
俺がやっていた道化の化粧ではなく、
踊り子のような化粧を施した。
完成させて、改めて見る。

そして笑った。

「なんで笑うんだよ」

もう一度姿見の前に立たせた。
黒ずんだ皮膚は白いどうらんに隠れた。
崩れかけた皮膚も多少ごまかせた。

そして唇にさした紅が、
かつての健康だった頃のqを彷彿とさせた。

qの表情がいきいきとしてきた。

「俺、踊り子になれるかな?」

「男の踊り子だってえ?馬鹿いうなよ!」

その後、俺は壁から姿見を引き剥がして、
市場においてきた。