赤色巨星

俺は小屋を辞めた。

「サダクロー、小屋に行かなくていいの?」

「幽体離脱もそろそろ飽きられるころだ。
客が離れる前に、こっちから辞めてやったのさ。」



俺は市場をうろつき、食材を集めた。
できたら、昔山で作っていたものを食べさせたかった。
だが、この地では山で使っていた食材はなかなか手に入らなかった。
かろうじて芋の類と胡麻があった。

ここの連中の主食は小麦粉だった。
芋を摩り下ろして小麦粉を加えて一口大に丸めて茹でた。
胡麻は油が出るまですりつぶして粉を入れて容器で固めた。

「まじいなこれ」

「文句をいうんじゃないよ。この食べ物は力になるんだ」

qは口の中や喉をやられていて食べ物を飲み込むのがつらそうだった。
食べ物は最終的にはすべて、噛まずに飲み込めるほどやわらかくした。


夜になると咳が出て、呼吸が苦しそうだった。
俺はずっとqの背中をさすっていた。
あまり苦しそうなので、無駄だとわかっていたが、
癒しの呪文を唱えた。
くりかえし、くりかえし、唱えながら背をさすった。
すると、しだいに落ち着いてくるのだった。

「サダクローの癒しの呪文、効いてきた」

きっと精神的なものに違いなかった。
それでも文字通り、神にでもなんにでもすがりたかった。

「俺、死ぬの怖いな。死んだらどうなるの?」

qを後ろから抱いた。
qの足はとても冷たくなっていた。
俺は自分の両足でqの足をはさんであたためた。

「俺も、死んだこと無いからわからないな。
お山ではさんざん、そういうこと勉強してたんだけど、やっぱり、わからないな。」

「坊さんでも、わからないんか」

「そんなもんだよ」

「ふふ」

qが、ため息とも、笑いともとれる声を出した。

涙が出た。
自分は無力だった。
俺は生涯の中で最も無防備になった。

嗚咽し続けた。

qが大儀に体を裏返して、俺と向かい合わせになった。
俺はqの胸で泣いた。
qはずっと、俺の髪を撫でていた。