一緒にくらしてみると、qは何一つまともにできることがなかった。
部屋はちらかすだけちらかして、片付けるということがいっさいできない。


「お前、ちゃんと風呂入ってんのかよ」

だいぶ汚れていた。
バスタブに入れてシャンプーをぶっかけてごしごし洗ってやった。

湯をはって、一緒に湯に浸かった。

こっちに来てからはあまり湯船に入ることがない。
こっちの連中は体の汚れを洗うだけで、湯につかることが無いらしい。

体をのばしてほぐしていると山の大きな浴場を思い出した。

「ねえねえ、サダクローのパパとママってどんなだった?」

「パパとママ?」

物心ついたときから山にいた俺には通常の家族という概念がない。

「俺、親いないんだ」

「みなしごなの?」

「どうなんだろうなあ。」

「俺、昔僧侶だったんだ。」

初めて、自分の過去を話した。

「そうだったよね。サダクローは最初、僧侶の格好してた。」

「そうだな。お前が俺の金盗みやがったとき。」

qの奴は湯にもぐって、手で水鉄砲を作った。

「あの時はすでに破戒僧だったよ。」

「なにそれ?」

女を抱いたことを話したら、せっかく落ち着いてるqがまた荒れるだろう。
めんどうだから言わないことにした。

「掟やぶりだ。それまでは、
治癒と守りの呪術が使えたんだが、使えなくなっちまった。」

「ふうん。それで冒険をあきらめたわけ?」

「そうだな。」

「ガレー船の中で、俺と会ったとき、偶然だと思った?」

「ああ。そうじゃないのか?」

「俺、サダクローの後、つけてたんだよ。
サダクローがガレー船に乗るの見て俺も乗ったんだよ。」

「なんだ。そうだったのかよ。
なんでそんなことした?」

「そりゃ、一緒にいたかったから。」

「なんでよ?」

「サダクロー男前だもん。」

笑っちまった。

「素直によろこべねえな。」