「ももちゃんと言うのは、この前言ったとおり高校の同級生の桃太のことだ。うん、それは間違いない。しかしその桃太は、実はうちの病院の看護師でもあるんだ。そこには、こんな経緯があった」

サトシは、一つ咳をして、話を続ける。

「実はももちゃんは、ミュージシャン志望だったんだ」

「は?」

「ももちゃんは高校卒業後、親の反対を押し切り、ミュージシャンを目指し上京した。しかし、やはりその道は険しく……志半ばで彼は夢をあきらめたんだ。そしてその後、新たな道として目指したのが看護師だったわけ。それで、看護学校をこの春卒業した彼が俺に就職の相談をしてきたから、うちの病院を紹介したんだ。だから彼は、高校時代の友人・桃太であると同時に、うちの病院の看護師・ももちゃんでもあるというわけなんだ。二人は同一人物なんだよ!」

「……」

ミュージシャンを志して挫折って……

なんてベタな設定……

もう少しマシな嘘は思いつかなかったのだろうか。

唖然とする私に、サトシはこんな言葉をつけ加えた。

「ほら、友里、こういう説明なら、納得できるだろう?」

え!?

「こういう説明なら納得できるだろ」って……

いやいや、全然納得できないけど!