「俺が『体験ダイビングをやろう』と言ったから、友里はウェットスーツを着ていて、そのおかげで体が浮いたわけだろ? 俺が『シュノーケルのマスクを持っていこう』と言ったから、友里はマスクをしていて息が出来たわけだろ? 俺がどっちも提案してなかったら、友里はおぼれ死んでた可能性が高いわけだろ?」
たしかに、ウェットスーツとシュノーケルのマスクがあったから、助かったのだと思う。
だけどそれ以前に、「あまり遠くまで行くのは怖い」と言った私の手を引っぱって沖に連れて行ったのはサトシであって。
浅瀬でのんびり遊んでいれば、そもそもこんな目にあわなかったんだけど?
「俺が友里の命の恩人か。感謝しろよ?」
「……」
サトシが勝手に、私の命の恩人になった。


