沖へ、沖へと私を流そうとする潮の流れに抵抗し必死に泳いだけれど、岸へと向かう波に乗って泳いで進んでも、次の瞬間、沖へ帰る波にまた押し戻される。
その繰り返しだった。
「死ぬかも……!」
しかし、私にとって幸運だったことが二つある。
一つは、ウェットスーツを着ていることにより、体が自然と浮いてくれたこと。
もう一つは、シュノーケルのマスクをつけていたため息が出来たので、パニックにならずに済んだこと。
そうして、死にもの狂いでどうにか水位の浅いのところまで戻って来た私に……
ゼイゼイと肩を大きく揺らしながら呼吸をしていた私に……
サトシはこんな言葉を投げかけてきたのだった。
「友里、泳ぐの苦手って言っていたくせに、どうしてあんな遠くまで行ってきたんだよ?」
は!?
どうしてって……
別に自発的に行ってきたわけではなくて!
波にさらわれて連れていかれたのであって!
あのね、私、今、海難事故にあっていたの!
危うくおぼれて、死ぬところだったの!


