そこは延々と遠浅になっており、行けども行けども、ひざの辺りまでしか水位がないのである。
「なんだここ? これじゃあ泳げないよな」
なるほど、だから誰もいなかったのか。
「もっと向こうまで行こう」
サトシがザブザブと波を切って歩き、沖に行こうとする。
「ねぇ、あまり遠くまで行くのは怖いから、やめようよ」
大丈夫だよと言いながら、サトシは私の手を引いて歩きつづける。
しばらく行くと……
「わっ、ここから、急に深くなってるぞ!」
ひざまでの深さだった遠浅の海岸は、その場所からいきなり足の届かない深さになっていた。
水中をのぞくと、海底はかなり下の方だ。
「深すぎて怖いよ、ねぇ、戻ろう」
そう懇願した次の瞬間だった。
私は、ザザーと引いていく波にさらわれてしまった。
急に深くなっていたその場所から、潮の流れが変わっていたのだ。
「……っ!」
波に飲み込まれた私は、あっという間に流されてしまう。


