その日の夕食時、ペンションのプール脇のテーブルにはキャンドルが飾られ、ロマンチックなディナータイムが演出されていた。
潮の香りと波の音、それからヤシの木の葉がすれる音が、南の島でのバカンス気分を盛り上げてくれる。
テーブルを挟んだ向いには、キャンドルにほのかに照らされた恋人の微笑み。
それは、夢みたいな夏の夜。
「ところで、明日は何をしたい?」
グラスを口に運びながらサトシが尋ねてきた。
「浜辺でのんびり、海を見て過ごしたいな」
私は昔から、海が好きだ。
けれど、海で泳ぐのは好きではない。
泳ぐのが得意でないこともあって、波のある海で泳ぐのは怖いのだ。
私にとっての「海」は、浜辺でくつろぐもの。
だから、私の好きな海での過ごし方は、時間を忘れるくらいのんびりと浜辺から海を眺めていることだ。
しかしサトシは……


