少しの沈黙が訪れたあと、翔さんが静かに口を開いた。
「あのレストランに行くことと引き換えに約束したよね? サンドイッチの件。でも、サンドイッチの嫌がらせはまだ続いているし、写真立ての話も聞いた。ああいうのも、もうやめてくれないかな。そんなことをしても、何の意味もないって君も分かっているだろ?」
「犯人は私じゃないです!」
「いや、小倉さんだよね」
「う、疑われるような女に生きている意味が……」
「生きる意味は、自分で見つけるんだよ!」
翔さんの強い口調に、一瞬、辺りが静まり返った。
すいません、と周りに小さく謝ったあとで、声を落として話を続ける。
「……少なくとも、君はあんな嫌がらせをするために生きているわけじゃない。君に幸せになって欲しいと思う気持ちは、今でも変わらないよ。だから、考えて欲しいんだ。幸せになるために、どうしていくべきなのか」
「だって……でも、ずるいから」
「何が?」
「あなたの奥さん! 仕事も持ってて、友達もいるんでしょ? それで、翔さんも手に入れているなんてずるい。翔さんだけでも私にくれたっていいじゃない!」