彼女の感情の高ぶりが少しおさまってきたところで、翔さんは話を再開した。
さすがに今日の彼は、彼女の泣き落としにも屈しないようだ。
「そもそも、引越前に想い出を作りたいから協力してくれっていう話だったよね? 引越はどうなったの」
「……」
「引越の話は嘘だったの?」
「……です」
彼女が、何かもごもごと口にした。
「え?」
聞き返した彼に、彼女が、開き直ったかのような大きな声で言い切った。
「確かに引っ越しの話は嘘でしたけど、プロポーズの話だって奥さんの嘘です!」
どういうことかと聞き返した彼に、彼女はこんなことをのたまった。
「私がプロポーズされたって話した……っていう話自体が奥さんの作り話です。私、そんな嘘ついてません! 奥さんが、私を陥れようとしているんです!」
なんてことを言うのよ、この嘘つき!


