「――それ、美味しいだろ」

「うん」

私はリビングでお菓子を口に運んでいた。

ドイツ土産のクッキーだ。

翔さんが淹れてくれた紅茶から、白い湯気が上っている。

お気に入りの銘柄の紅茶は、そのクッキーとよく合っていた。


あんなに緊迫した雰囲気の話し合いの直後に何をのんきにティータイムなどしているのかと自分でも思うけど……

なにしろ、昨夜は夕食も取らず、そのまま翌日の午後まで寝ていたのだ。

思えば丸一日以上、何も食べていなかった。

さっき部屋で、立ち上がった翔さんに続いて私も立ち上がったところ、めまいがしてふらついてしまったのである。……空腹のあまりに。

温かい紅茶とクッキーで空腹が満たされてくると、ようやく冷静に頭が動きはじめた。