犬の迷子事件を通して知り合った彼女は、高校時代から長年の引きこもりなのだそうだ。
高校を中退して以来、外に出るのは自宅の庭くらい。
庭の花の写真を撮るのが唯一の趣味である彼女には友達もおらず、もう十年以上、家族以外の人とは口をきいていなかったそうだ。
そんなある日、庭に犬が飛び込んできて。
迷子札に書いてある連絡先に母親が電話をしたところ、迎えに来た彼と知り合った。
それは彼女にとって、久々に会う外部の人。
最初は、お礼を言われても無言で頭を下げただけで、口を開くそぶりもなかったという彼女だったが、
「いい人に保護してもらえて良かったな、シェリー」
犬に満面の笑みで話しかけた彼に、心を動かされたようで。
「犬、好きなんですか? 私も、好き」
それが、彼女が彼に最初に発した言葉だったそうだ。
その日をきっかけに、彼女は近所を散歩するようになったらしい。
彼と犬に会うために。


