どうやら私は、昨夜あのまま眠ってしまったらしい。
帰宅した翔さんは、チェスの駒が散らばる室内で私が倒れているのを見つけ、それはそれは驚いたという。
「まさか朝まで寝ちゃうとは思わなかったな」
目をこすった私に、翔さんが腕時計を向けてくる。
「もう午後だけど」
どうやら私は、ずいぶん長い間眠り込んでいたようだ。
翔さんは呆れたようにため息をついた。
「こんなところで寝ていたら風邪ひくぞ。だいたい、なんでチェスの駒がこんなに散らばってるんだ。事件かと思ったじゃないか」
「そんなことより」と、私は慌てて向きなおる。
「どうして日本にいるの? なんで帰ってきたの?」
しごくもっともであろう疑問をぶつけたところ、翔さんは思いだしたように神妙な顔つきになった。


