サトシは黙ってドアを開けると車から降り、トランクに向かい、そこから取り出したビニール袋を手に戻ってきた。

「これ、さっき言ってたチョコボール。全部やるから、もう友里は何も考えないで、一週間くらい無心でそれを食ってろよ」

そのビニール袋を、私のひざの上に乗せてくる。

中を覗くと、三十個以上はありそうだった。

「無心で食べてるの?」

「そう。友里はいろいろ考えすぎて、疲れてるから。一週間くらい、何も考えなくていいよ。その間に、俺が考える」

「サトシが考えてくれるの? 私の問題なのに」

「友里の問題は、俺にとっても大問題!」


開けろよ、とサトシに促されて、チョコボールを一つ手に取る。

ビニールの包装をはずし口ばし部分を開けると、「金のエンゼルだったか?」とサトシが尋ねてきた。

「……金のエンゼルじゃないけど、もっといいものだった」

「金よりいいのってなんだ。まさかのプラチナエンジェルか!?」

「それよりもっと、ずっといいもの」


手のひらに一粒出し、それを口に含む。

サトシの心づかいが甘く口の中に広がって、私はビニール袋をぎゅっと抱きしめた。