小倉家からの帰り道、途中の自動販売機の前で立ち止まると、サトシはおもむろにポケットから小銭を出して機械に投入した。

「涙は血液から作られているから、涙を沢山流すと、その分血液中の水分が減ってしまうんだ。水分量が減ると血液がドロドロになっちゃうだろ、だから友里はこれを飲んどけ」

スポーツドリンクのボタンを押したサトシに、血液がドロドロになるほどは泣いてないよと否定したけれど、「念のため!」と出てきたそれを手渡された。


家に着くと、サトシは駐車場に止めておいた車の鍵を遠隔操作で解除した。

遠くから来てくれたサトシをこのまま帰すのは悪いかなと思いもしたけれど……

「ごめんね、お茶も出さなくて。夜に元カレを家に入れるのは、さすがにちょっとまずいかなと」

サトシは信用してるけど、こればかりはケジメの問題だ。

「ああ、いいよ別に。今買ってきた飲み物もあるし」

サトシは、自分用に買った缶コーヒーを小さく掲げ

「良かったら、車の中で少し話さないか?」

その手で、車を指差した。