結衣子さんに聞かれるままに、少しずつ、私は小倉さんのことを話しはじめた。

もちろん、私は彼女が言ったことをすべて鵜呑みにしたわけではない。

彼が彼女にプロポーズしたという話も、当然嘘だと思っている。

だけど……

「彼女、イタリアンレストランで彼と会ったって言ってたんです。だから私、帰り際に聞きました」

言いたいことだけ言って席を立った彼女の手首をつかんで。

そのイタリアンレストランに行ったのはいつなのか。

どこの店なのか。

私の手を乱暴に振りほどきながら彼女が答えた店と日時は、あのレシートのとおりだった。

「つまり、彼女が一か月前のその日に、彼とあの店で食事をしていたことは間違いないんです」

彼女に会って分かったことは、やはり彼が、私に嘘をついて彼女と会っていたという事実。

「なんかもう、どうしたらいいのか分からなくなってきました」