サトシとあらためてデートをしたのは、その翌週のことだった。

待ち合わせ場所を決めて欲しいと言われ銀座の三越前を指定したけれど、当日、約束の時刻を過ぎてもサトシは現れなかった。

街角の雑踏に目を走らせ、サトシの姿を探す。

五月の風がいたずらに私の髪をもて遊ぶから、私は、せっかく巻いてきた髪が乱れてしまうのではないかと、必死に髪を手で押さえていた。


十分も待ってから、しびれを切らして携帯に電話をしてみたところ、サトシは別のデパートの前で待っていると平然と告げてきた。

「え? 待ち合わせ場所は、三越の前でしたよね?」

「ああ、そうだね」

「では、何故そちらにいらっしゃるんですか?」

「だって、ここに二つもデパートがあるから」

「は?」

意味が分からなかった。