どれほどの時間、そうしていただろう。 寝室から携帯の着信音が何度か聞こえてきていたことには気づいていたけれど、立ち上がる気力はなかった。 手の中にあるノートをすべて読み終えた私には、もはや何の気力も残ってはいなかったのだ。 「人間、中身はなかなか分からないものだと思うけどなぁ」 いつだったか、谷本先生がそんなことを言っていたことを思いだす。 そう、人間の中身は、なかなか分からないもののようだ。 だって、まさか。 だってまさか、翔さんが。 ……浮気をしていただなんて。