「秋から、ドイツ赴任になりそうなんだ」 彼はドイツ語が好きで、ドイツが好きで、ドイツで働くことが学生時代からの夢だったと聞いたことはある。 だから、いつか行くのかもしれないとは、なんとなく思っていた。 でも…… 何もこのタイミングでなくたって、と、私は両手を握りしめる。 「私、仕事が……」 咄嗟に私の口から出たその言葉に、彼は優しく頷いた。 「分かってる。だから、一緒に来ても、来なくても、友里のしたいようにしていいんだよ」