「そうは言ってもさぁ」

谷本先生は、まだ納得がいかない様子で両腕を組んでいた。

「偽名はやっぱり怪しいだろ」

「サトシも偽名で祝電送ってきましたけど」

「いや、あれは偽名になりきれてなかったし」

谷本先生は「うーん」と少しうなってから、「分かった!」とぽんっと手を叩いた。

「こういうのってさ、裏が怪しいんだよ。裏に、呪いの呪文とかが書いてあったりして」

「浩二ってば、結婚祝いかもしれないものに、失礼なこと言わないで」

結衣子さんがきつい口調で咎めたけれど、意に介さない様子で「開けてみよう」と谷本先生は写真立てを手に取った。

「何も書いてあるわけないじゃない」

結衣子さんが、少し怒ったような声になる。

「開けてみないと分からないだろ~」

冗談交じりでそんな軽口をたたきながら写真立ての裏ぶたを開けた谷本先生も、予想していなかったと思う。

まさかそこから、本当に呪いじみたものが姿を現そうとは。