「おいおい~」
私の説明を聞き終えると、谷本先生がどこか呆れたような声を出した。
「結局、そのハラマキって子が送ってきたわけでもなかったってことは、今現在も差出人は不明なんだろ? 誰が送ってきたか分からないようなものを飾るって、どういう神経だよ、友里ちゃん。気味が悪いじゃないか」
言われてみれば確かにそうなのだけれど、実は私も、かつて匿名で友達に贈り物をしたことがあるのだ。
ただの気まぐれだったのだけど、ガーデニングが好きなその子に、花の種を送った。
「春の精より」などという、少女じみた差出人名を書いて。
友達の字であるわけだから、差出人が誰かなんて書かなくてもすぐに気づくにきまっている、とたかをくくっていた私の読みは甘かった。
その子は、いつまで経ってもそれが誰から送られたものなのか、気づいてくれなかったのだ。
「あれは、実は私が送ったのよ」などと自分からバラすのも気恥ずかしくて、結局のところ、あの花の種の送り主が私だということを、その子は今も知らないままでいる。
そんな経験があるからかもしれない。
差出人不明の贈り物に対する私の警戒が薄いのは。
それに、そもそも――
花の写真を送ってきた人に、悪意があるとは思えなかったし。


