三人をリビングに通すと、まずはお茶を入れるために、私はキッチンへと立つ。
戻ってくると、ソファに座る結衣子さんのひざの上で、美波ちゃんが「くまー、くまー」と出窓に向かって手を伸ばそうとしていた。
出窓に飾ってあるテディベアに興味を示しているようだ。
「ダメよ、美波」
結衣子さんが美波ちゃんをたしなめる。
「ああ、いいですよ。美波ちゃん、はい」
テーブルに湯呑をおいてから、そのテディベアを手にして美波ちゃんに渡した。
シュタイフ社のテディベアは、翔さんがドイツ出張のお土産として買ってきてくれたものだ。
「美波、汚さないように気をつけるのよ」
そう注意しながら、結衣子さんは、テディベアの横に飾ってあった写真立てに目を向けた。
「ところで、あの写真は何のお花?」
それは、あの贈り主不明の写真立てだった。
「さぁ、何の花かは分からないんですけど」
立ち上がって写真立てを手に取ると、テーブルに置き、「実はこれ……」と、私はことの次第を説明しはじめた。


