「……私が大学時代に家庭教師をしていた高校生の子が、原真希ちゃんって名前だったの。ハラマキ。もしかして、その子が結婚でもしてオダマキになったのかなぁ?」

「そうなんじゃない?」

「だとしても、あのマキちゃんがここの家の住所を知っているはずはないんだけど」

それに、そんな過去ではなく、もっと最近、見た気がするのだ。

この字を。

いったい、誰の字だったろうか……

「ともかく、まずはそのハラマキちゃんに連絡してみたら? これ、送ってくれたのかどうか」

「うん……」

なにか釈然としないものを感じながら、私は、それをひとまず出窓に置いた。

どこからか、犬の遠吠えが聞こえてきた。