だからって、と私は首を振った。

「そもそも、そんな嫌がらせを遠方に住んでいるカナさんができるわけないじゃないですか」

「あ、そっか。でも、じゃあ犯人は何者なんだろうな。友里ちゃんたちには、そんな嫌がらせをされる心あたりはないんだろ?」

「ないですよ、もちろん」

うーん、と、谷本先生と二人で首をひねる。

「まぁまぁ。その話はそれくらいにして。友里ちゃん、ビーフシチュー沢山作ったの。いっぱい食べて」

白いエプロンをした結衣子さんが、「おかわりしてね?」と微笑みかけてきた。

「ありがとうございます、いただきます」

丁寧に磨かれた銀のスプーンで、そっとシチューをすくう。


嫌がらせをされる心あたりなんて、ない。

絶対にない。

ない、と私は思っていたのだけれど……