空のグラデーションは、いつしか薄闇に包まれて見えなくなっていた。

私の話に耳を傾けていたサトシが、そっとバックミラーの位置を直した。

「私ね、彼が浮気をするかもとか心配していたわけじゃないの。でも、よその女性がなれなれしくしてくること自体が嫌だった。だから、釘を刺したの」

「うん、分かるよ」

「昔だったら……」

私は、運転席のサトシの方に目を向けた。

「昔の私だったらね、こんなとき、きっと何も言わずに事態を見守っていただけだと思うの。でも、サトシのおかげで学んだのよ。どんなに小さなことでも、不安の種を放置してはいけないんだってこと」

ほんの少し嫌味を込めて言ったのに

「そうか、俺のおかげで学んだか」

サトシが得意げな顔になったので、

「いや、そこ、サトシが得意げになるところじゃないから!」

私は笑って突っ込みを入れた。

サトシも小さく笑って。

それから、ふいに真面目な口調で助言めいたことを言い出した。