「とにかく、良かったよ。友里が幸せそうで」
「うん、幸せよ。サトシも幸せでしょ?」
「幸せだけど……俺とあいつはしょっちゅう喧嘩してるんだよなぁ」
サトシが左手で頬をかいた。
「そうなんだ」
「友里たちはしないの?」
「喧嘩? 喧嘩はしたことないな」
「意見の食い違いとかないわけ?」
「うちは、意見の食い違いがあったときは、チェスで決めることにしてるから」
「なんだそりゃ!」
二人の意見が食い違ったときは、チェスで勝った方の意見を優先させるのが私たちのルールなのだ。
もっとも、私はハンデを貰った上で、ときたまズルもするのだけれど。
そのことを教えると、
「平和でいいなぁ」
と苦笑したあとで、サトシは
「それにしても」
と付け加えた。


