【完】 After Love~恋のおとしまえ~




「ところで、病院の駐車場に車を止めてるんだけど、ちょっと車に戻ってもいいかな。荷物を取りたくて」

病院に着くと、サトシがそう言い出した。

「うん、もちろん」

日曜日の病院の駐車場には、止まっている車はほとんどなく閑散としている。

そんな中、かつて、よくサトシが停めていた場所に、サトシの車があった。


私と付き合っていた頃、サトシは、二台の車を持っていた。

すでに一台持っているにもかかわらず、新しい車を衝動買いしたからだ。

そのうちの一台が、そこにあった。

懐かしいコンバーチブル。


「まだあの車、乗ってたんだ?」

「気に入っているからね」

「だけどサトシは、またすぐ新しい車に目移りするんじゃないかと思ってた」

「心境の変化でさ。気に入っているものは、大切にすることにしたんだ。目新しいものをすぐ欲しくなるのが自分の悪いところだって、自覚したからな」