お寺をあとにした私たちは、サトシがかつて住んでいたマンションを見に行くことにした。

「俺の部屋、今はどんな人が住んでいるのかなぁ」

私たちが一緒に食事をしたり、DVDを観たり、幸せな時間を過ごした場所。

同時に、私が次から次へとサトシの浮気の証拠を見つけてしまい、辛い思いをした場所。

沢山の思い出がつまったサトシの部屋は、今は他の誰かが、そこで新しい時間を積み重ねているのだろう。

「この公園も、懐かしいなぁ」

マンションに行く途中で、サトシが、通りがかった公園の前で立ち止まった。

「ほんと」

そこは、かつて、サトシと一緒に花火をした公園だ。

そして――

サトシと目が合い、お互いに小さく微笑む。

――私たちが、初めてのキスをした場所でもある。