「運転手も財布もいらない。やり直すつもりはないの」 そんな言葉を放ちながらも、思わずにはいられなかった。 ――今、そうして、そこまで私を求めてくれるのなら。 どうしてあのとき私を選んでくれなかったの。 あのとき、私を選んでくれさえすれば…… 私は一生、サトシのそばを離れなかったのに。 きっと、何があっても離れなかったのに。 「だけど、俺は絶対、友里とやり直す」 私の意見を聞かないところが、相変わらずサトシらしかった。 サトシの服の袖口や裾から、水滴がぽたぽたと落ちていた。