あえて意地悪して「ももちゃん」と言ってみたら

「……聞いたら、友里に聞けって言われた」

サトシは、不機嫌な声を出した。

その不機嫌な声に対して何かを言う元気は、私にはもう残っていなくて。

「ねぇ、サトシ。あのさ。この電話、切ってもいい?」

「は? 切るって、なんで。まだ話の途中だろ」

「なんだか、疲れちゃった」

「え?」

サトシとももちゃんのことを考えるのも。

サトシと、話し合うことさえも。

「もう、何もかもに疲れちゃったの」

いつの間にか降り出した雨が、窓を強く叩いていた。