サトシから電話がかかってきたのは、その夜のことだった。
「もしもし」
私が電話に出ても、サトシは黙っていた。
「もしもし?」
「……友里、今日、谷本先生に会ったんだろ?」
おもむろにサトシが言い放ったのは、そんな言葉だった。
「会ったよ」
「そのとき何を話した?」
知ってるくせに。
谷本先生から聞いたんでしょ?
だから電話をかけてきたんでしょ?
「別に何も」
サトシが自分から言い出さないのがずるいから、私はとぼけてみせる。
「友里、谷本先生が通りがかった時に……広瀬さんと話していたんだって? 何で友里が、広瀬さんと……何を話していたんだよ」
「さぁね。『ももちゃん』に聞いたら?」


