「広瀬桃子さんですよね。先日、電話をくれましたよね。サトシの携帯から」
「えぇ」
「私に何か話したいことがあったんじゃないですか」
それでわざわざ会いに来たんですか、とでも言いたげな不敵な笑みを浮かべながら、ももちゃんは首を振った。
「ええ、あの時はありました。でも、もういいんです」
「もういいって、どうして?」
「私、サトシ先生が二股しているんじゃないかって疑っていたんです。それで友里さんに電話しちゃったんですけど。でも、あの時点ですでに二人は別れていたんですよね? だったら、もう話すことはありません」
え?
いや、まだ別れてないし……
一瞬話が見えなかったけど、すぐに状況を理解した。
おそらく、サトシはあの電話――ももちゃんが私にかけてきた電話――の後、ももちゃんに言い訳をしたのだろう。
「友里とはもう別れたから」とか何とか。


