その電話は、ある日突然かかってきた。

「友里さんですか?」

着信音が鳴った時、私の携帯のディスプレイにはサトシの番号が表示されていたのに。

携帯から聞こえてくるのは、見知らぬ女性の声だった。

「友里さんですか?」

強い口調のその声が、再び私の名を呼んだ。

「あ、はい、そうですけど……」

答えながら、私はその女性が誰なのか、確信していた。

「私、広瀬桃子といいます。友里さんにお話があるんですけど」

広瀬桃子。

やっぱり、思ったとおり。

この人はきっと、サトシの「ももちゃん」だ。


恋人の二股相手が、ついに直談判の電話をしてきたのである。

もちろん驚いたけれど――

それでもどこか、冷静に受け止めている自分がいた。