「どうして?」

「……」

それがたとえどんな意味のものだとしても。

今、サトシからそんな高価な指輪はもらいたくないと思ってしまった。

自分でも理由は分からないけど……

今はまだ、もらいたくない。


私が望んだ通り、サトシは戻ってきたのに。

色々あっても

「それでも、サトシのそばにいたい」

そう思った私なのに。


やっぱり、すべてをなかったことにして、わだかまりを失くすことなんて……

そう簡単には、できないみたいだ。


「一度嘘をつく男は、何度でも嘘をつく」

いつか雑誌で見た言葉が、また脳裏をかけめぐる。


ももちゃんは、いなくなってもなお、私の心に影を落とす。

なかったことにしたいのに。

なかったことにはできなくて。

それでも、こんな心の揺れは、時間が解決してくれるのだろうと思っていた。

もう一度、100%の気持ちでサトシに向き合える日が来るに違いないと、そう思っていた。