「友里?」

サトシの声も、耳に入らない。

私はその場に立ち尽くした。


私だって、サトシの部屋の家事をしてみたいと思ったことはあった。

だけど、女房気取りと思われたくないから、躊躇していたのだ。

サトシから頼まれたら、いつだって喜んでやったのに。

――やりたかったのに。


サトシの部屋の家事をももちゃんがやっている。

こんなのって……

もはや、ももちゃんの方がサトシの恋人みたいじゃない?

私の方がサトシの浮気相手みたいじゃない?

そんなの、許せない。

そんなの……

私、許さないから。


唇をぎゅっと噛む。

強い風が、ももちゃんの干した洗濯物をバタバタと揺らしていた。

春の嵐が訪れそうだ。