「実はそのだし取りパック…、俺が使ったんだよ。俺がだしを取ったんだ」

サトシはこの期に及んでも、まだシラを切るつもりのようだった。

「あ、そう。じゃあ、だしを取って、そのだし汁をどうしたの? サトシ、料理なんてしないよね? 何を作ったっていうのよ」

今回は容赦せずに追及する。

もう逃げない。

この問題から、私は逃げない。

けれどもサトシは、こんな風に即答した。

「飲んだ」

は?

「飲んだって……だし汁を?」

「いやー、変な嗜好だと思われたら嫌だから、今まで隠していたんだけどさ。実は俺、だし汁が好きなんだよ」

「……」

「仕事のあとは、ビールより、だし汁で一杯やるのがいいんだ」

「……」

「だから、だし取りパックが俺の部屋にあっても、全然おかしな事じゃないんだ。いや、むしろ自然。だから友里も、そこのところを不思議がらないようにしてくれ。なっ?」

いや、だってサトシ、だし取りパックを見て「それ何?」ってさっき私に聞いたじゃない。

その存在を不思議がるなと言われても……

なんていうか、むしろ、そんなバカバカしい言い訳で事態を収めようとしているサトシの思考回路を不思議がるわ!