ももちゃんの存在を、私はこれまで、十分すぎるほど認識していた。

ももちゃんがサトシの部屋に来ていることにも、気づいていた。

それなのに私は、サトシの浮気心が冷めるのを、ただ黙って待っていた。

何もせず、ただひたすら待っているだけだった。

だけどそれは、あくまでも自分の方がサトシに近い場所にいるのだと、そう信じていたからで――

だし取りパックの束を、ぐっと握りしめる。


ももちゃんがサトシの部屋で、料理まで始めたという事実が。

自分の使いやすい料理グッズまで持ち込んでいるという事実が。

ついに私を、焦らせた。

これ以上黙っていてはダメだと、私の中の私が叫ぶ。

私はだし取りパックを手に、リビングのソファで本を読んでいるサトシの元へゆっくりと近づいた。

今度こそ問い詰めるのだと、意を決して。